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ジェイソンの世界オーガニック冒険の旅
毎回一つの農場を体験し、そこでの生活を学ぶ


"アソック" 活動:タイの仏教徒が築くオーガニック農場と持続可能なコミュニティ
農薬・化学肥料依存により破壊された農業経済を立て直すため、アソックの僧侶は何千人もの人々に新しい栽培法を教えています

ジェイソン・ウィトマー

農場紹介

所在地: タイ中央部、カエンクロから20キロ郊外

農業のタイプ: オーガニック農業

面積: 5ヘクタール

栽培作物: キャベツ、かぼちゃ、朝顔、バナナ、パパイヤ、フトモモ(タイ、ラオスなどで栽培される熱帯果樹)、米、マッシュルーム、大豆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集者より
ジェイソン・ウィトマーは
2003年1月8日にアメリカを発ち、 6ヶ月の冒険の旅でアジアとヨーロッパを横断し、さまざまな農場を訪れています。


ジェイソンの冒険の旅がどのようにして始まったのか、下記のリンクをクリックして読んでください:

ジェイソンの世界オーガニック冒険の旅:

イントロダクション:
オハイオの旅人、“世界草の根”ネットワークの農業通信員としてデビュー

はじまり::おじいさんの農場の手伝いから、2つの大陸を渡ってオーガニック農場への滞在まで

タイ東部: 農家、建築家であり、余暇を楽しむ人でもあるジョン・ジャンダイと出会います

ラオス: 過去の化学肥料による農業が、この農家にオーガニックにこそ未来があると確信させるにいたった経緯

タイ: “アソック”活動―タイの仏教徒が築くオーガニック農場と持続可能なコミュニティ

インド: 緑の革命から再生へ

ヒマラヤ: 西洋人は 侵入したが西欧化はなされず

スペイン: スペインのワイン産地における雑草そして伝統との闘い

 

 

 


2003年3月21日発信: タイ語で「ヒン・ファ・ファン・ナン」は文字通り訳せば「石、断崖、空、水」を表しますが、この場合、「豊穣」といった意味になるでしょうか。これはタイ中央部カエンクロから20キロの郊外にある、5ヘクタールの農地を持つ自給自足の仏教徒のコミュニティにぴったりの名前です。

「私たちには敵がいるのです。」アソック活動の25年来のメンバーであるディーラタナは指摘します。「それは他宗派の寺院に属する僧侶たちと肥料会社です」

ここ、ヒン・ファ・ファン・ナン――
「豊穣」では、西側の山あいから小川がせせらぎを立てて流れてきて、やがて、食用になる野生の蓮の花が咲き誇る沼地へと姿を変えます。沼地のまわりにはキャベツ、かぼちゃ、朝顔、バナナ、パパイヤ、フトモモの畑が広がっています。小川はそのうち池へと流れ込んでいって、人々はその池の中で泳いでいます。池の近くでは子供たちが、臼を使って手作業で自家製の籾米を挽いています。そして子供たちは竹のかごを使い、手先を素早く動かして、細心の注意を払いながら、籾殻を取り除いています。

道沿いに大きな岩が美しく敷かれたじゃり道を下って行くと、他の人々が、おが屑とキノコの胞子を混ぜ合わせてビニール袋の中に詰め込んでいます。これから、やがて、食用のキノコができるのです。熟成した堆肥が山のように積み上げられていて、その側を通り過ぎると、2人の子供たちが大豆をすりつぶして豆乳にしています。この後、豆腐をつくるため台所へ持っていくのです。

早起きと、幸福な毎日を送るための5つの戒律

叡智を分かち合う
“アソック”の活動では年に40回のセミナーを開催しています。

およそ20人の終身会員と20人の寄宿生で構成されるコミュニティ「豊穣」は、さらに大きな“アソック”の活動の一部となっています。“アソック”の活動によって、再生可能な農業がタイで始まり、“アソック”はそのリーダー的役割を担ってきました。アソックの「ア」はタイ語で否定を意味する言葉、そして「ソック(ソーカ)とは、「悲しみ」を意味します。だからアソックとは、「悲しみがない」とか「幸せ」を意味するのです。アソックのこの活動は、1975年にボドヒイラクサという僧侶が始めたものです。彼はタレントから転身した僧侶ですが、タイの仏教界の堕落を憂い、その反動としてこの運動を起こしたのです。現在アソックの活動に参加する会員は、国内に何千人もいますし、18ヶ所の自立したコミュニティで生活している会員も何百人もいます。

“アソック”の会員すべてがそうであるように、「豊穣」の人々も仏教の教えに忠実に従って生活しています。ここでは誰もが、「不殺生、嘘をつかない、禁欲、盗みをしない、断酒」といった仏教の5つの戒律を厳格に遵守しなければなりません。一日は、午前3時30分の起床に始まり、2時間の瞑想の後、一日の大半を労働に従事します。大人の食事は一日に一食だけです。

さらに、タイの主流派の僧侶たちの中には大金持ちが何人かいるのに対し、“アソック”の僧侶は一切の所有物を持つことを許されず、コミュニティの中で生活している在家の会員はお金を儲けることもありません。しかし、食費、宿泊費、医療費は全て無料ですし、学生は教育も無償で受けています。

「私たちはお金がなくても生活できるんだということを示したいのです。人は食物を育てることで生活の糧を得ることができるのです。お金を受け取って、稼ぐことなど必要ないのです。」と18年に渡って“アソック”を支え、2年前に「豊穣」に引っ越してきた女性のラクブーン・アソックツラクールは言いました。

西洋思想は終局へと向かう

アソックでは仏教の教えに基づく考え方やその実践方法を「ブーニズム」と呼んでいます。「ブーン」とはタイ語では「真価」という意味です。そして、少なくとも、協調性と道徳を基本としている彼らの考え方や実践農法が、資本‘主義’のような西洋の経済学とそれに基づく制度と同じくらい発展が可能であることを示すために、「ブーン」の語尾に「イズム(主義)」をつけ加えています。

団結心
この仏教徒のコミュニティ、「豊穣」では皆何でも分け合います。笑顔も分かち合うのです。

私たちは当初から自立することを目標の中心においていました。そして現在、ほとんどのコミュニティで、生きていくために必要な食物や加工品をほぼ完璧に生産しています。15年前、当時すでに完全な菜食主義者だった会員たちは、健康上の理由もあってオーガニックの農産物のみを生産し、食べるようになりました。

アソックツラクールは語りました。「私たちは農薬の危険性をよくわかっています。農薬を使用している人々を気の毒に思っていますし、私たちタイ人にとってオーガニック農法こそが最もよい方法であることを証明したいと思っているのです」――と。

会員たちは、もともと小さな蚊でさえ手でたたくのを禁じられていました。さらに彼らは、仏法の第一の戒律「不殺生」をもっと徹底して守りたいと望むようになったのです。

「大量の農薬を使用していた時は、たくさんの虫を殺しました。私たちは生き物を殺したり、苦しめたくないのです。あなた方がシーケサット県に行かれたらたくさんの水田を目にするでしょう。でも、そこには生き物は生息していないのです。」とバンコク郊外にある“サンティ・アソック”コミュニティに所属する25年来の会員、ダープーン・ディーラタナは言いました。

ディーラタナは、彼らが農薬を使用しない現実的な理由があることについても触れました。「私たちは、第一の教え“不殺生”に反するという理由で、農薬を使用しないのですが、同様に生き物を殺すということは生態系を破壊することにもなります。自然の生態系では、生き物は害虫を減らすのに役立っているのです。農薬を大量に散布するのは、悪いことです。」

「6年前タイで起こった大規模な経済破綻以降、コミュニティではオーガニック農業と自立を目指したセミナーを開催し始めました。結局、農薬、化学肥料そして農業設備に投資しすぎ、あまりに困窮してしまった農家を、借金から救済策するために、政府がこのセミナーに対して資金提供さえ行うようになったのです。そもそも、企業から要請されて、近代的な化学農法を推し進めたのは政府だったのですから、いささか皮肉なことだと言えるでしょう。」

現在、会員は全ての穀物をオーガニック農法で育てています。いくつかのコミュニティでは最近、オーガニック農産物や加工品の販売店とレストランをオープンしました。コミュニティ以外の農園で生計を立てている会員が作った農産物も、アソックの検査官による許可があれば、コミュニティの店やレストランで販売できるのです。

会員が木製の手動式精米機を使っていることからもわかる様に、科学技術に頼ることはほとんどなく、トラクターなどの大型農機具も滅多に使いません。その方が、お金に依存しなくなる上に、コミュニティへの帰属意識が深まるとアソックツラクールは感じています。

「私たちは働いている時、親兄弟、姉妹といろんな話ができます。そのことで良い人間関係を築くことができますし、楽しさで一杯です。しょっちゅう冗談が飛び交って、皆の心は調和で満たされています。機械の精米機を使えば、ただお金を支払うだけに終わってしまい、お互いの人間関係を築くことにはなりませんからね。」と彼女は言いました。

アソックツラクールはさらに強調しました――アソックが実践していることの多くは伝統的なタイの農法を基本にしているのです――農薬のように西洋社会から持ち込まれたものではないのです――と。

「私たちは古来のタイの叡智から数多くのアイデアを得ています。私たちにはアメリカからの情報など不必要だし、アメリカ製の農薬は使用しません。あなたの国は私たちの国に有害な農薬を持ち込んだのですよ!」

智恵を深めあうことで、明るい日々が訪れる

多くのオーガニック農家と同じようにアソックの会員は絶えずより良い方法を模索しています。一例を挙げます。以前は、肥料と害虫抑止の両方に効力のある発酵混合物を、肥料会社が所有していました――しかし、数年前に、その代わりとなるものを会員は発見しました。それは土、焼いた籾殻、マメ科の植物、新鮮な葉、精米の過程から出てくる残渣、家畜の糞尿を元にした肥やしを混ぜ合わせたもので、それを砂糖と一緒に混ぜて発酵させ、水をかけ、7日間覆いを被せて、もう一度ひっくり返すとできあがりです。

「私たちは色々な方法を取り入れ、改善を図り、そしてその過程で得られた新しいやり方を他のコミュニティへと広く伝えているのです。」とアソックツラクールは言いました。

慈悲心や無私無欲といった概念が彼らの信仰の核心となっているため、アソックの会員はお互いの智恵を分かち合うことに多くの時間を捧げます。6年前タイで起こった大規模な経済破綻以降、コミュニティではオーガニック農業と自立を目指したセミナーを開催し始めました。結局、農薬、化学肥料そして農業設備に投資しすぎ、あまりに困窮してしまった農家を、借金から救済策するために、政府がこのセミナーに対して資金提供さえ行うようになったのです。そもそも、企業から要請されて、近代的な化学農法を推し進めたのは政府だったのですから、いささか皮肉なことだと言えるでしょう。

今日、アソックはその活動の中で、年に約40回のセミナーを主催しています。約一週間続くセミナーには毎回50人から
100人の生産者が参加します。農家の人たちは、混合物をうまく発酵させる秘訣から石鹸の作り方にいたるまであらゆることを学びます。

アソックツラクールは、これらのセミナーを開催すればたいてい大成功のうちに終わり、それは特筆すべきことだと指摘しました。「ほとんどの農家は、次に来た時には『セミナーで教えてもらった方法は最高で、そのおかげで生産量が増えた』と言ってくれます。」

新未来への扉が静かに開く

しかし、アソックの実践と理念が、外部からの非難なしに進んで来たわけではありません。「私たちには敵がいるのです。それは他宗派の寺院に属する僧侶たちと肥料会社です。」とディーラタナは指摘しました。

最初からアソックの活動はタイの仏教の主流派によって反対されてきました。数年前には活動が間違っているとして訴訟事件にまで発展しました。オーガニック農業の普及によって大きな損失を被る化学肥料の会社も、アソックの活動に対して幾つかの問題点を主張していました。ディーラタナが言うには、「政府の資金援助でセミナーを開催できるなんて、役人を買収しているに違いない。」と疑いをかけられた上、アソックの活動は換金作物農業による経済活動にも悪影響を及ぼし、なおかつ、肥料会社の販売実績の悪化を引き起こしているとして彼らは告訴されてしまったのです。

一年前、あるアソックの食料品店が放火されました。そのコミュニティは告発しませんでしたが、多くの人は容疑者ははっきりしていると感じていました。「村の人々は、容疑者が肥料会社の誰かだと思っています。」とディーラタナは言いました。

ディーラタナは、アソックのコミュニティの近郊で開催されたオーガニック農法のセミナーが原因で、その会社が多くの損失を被ったことを説明しました。実際、化学肥料を使わずに生産量を増やせることを知って、その村の人々はほぼ全面的にオーガニック農業へと転向したのです。その放火が誰のせいであるか、誰も確信はないとはいうものの、肥料会社が彼らに敵意を持っていることは周知の事実です。

反面、アソックの実践を援助し、彼らの勇気を賞賛してくれる人たちもたくさんいます。4つのコミュニティに滞在し、共に働いたアメリカ人のルーク・キャノンもその一人です。キャノンは語ります――「アソックは、たいていの人々が恐れて直面しようとしない多くの難問題に取り組んでいるのです。それが政治や伝統のかかえる問題であってもね。」

小規模農家であり、レンガ作りの建築家であるジョン・ジャンダイも賛同者のひとりです。彼はコミュニティ内で会員たちが何軒かのレンガの家を建てる時に、力を貸してくれました。ジャンダイはアソックの活動がどんなに成果があるかを力説しました。「アソックはタイでの自立した生活の最良のモデルです。彼らは“書いたり、話したり”といった単なる議論にとどまるようなことはありません。ただ実行あるのみです。私はそれが最良の方法だと思っています。」

外部の反対やコミュニティ内の厳しい規則があるにもかかわらず、会員たちは自ら早朝3時30分には起床し、オーガニックの自家製豆腐を食べ、一緒に座って手作業で籾から籾殻を取り分けます。

「ここでの生活は平和で、私は幸福な人生を送っていると自信をもって言えます。」とアソックツラクールは言いました。

彼女のような人々にとっては、「豊穣」以上の幸せはないのです。

次回
ジェイソンとデレクはインドへ向かっています。しかし今わかっているのは、それだけです。2人の勇敢な旅人が代数、幾何学、微積分を私たちに教えてくれたその国から再び連絡をくれるのを待つことにしましょう。――まだ何の連絡もないのは何か理由があるのかもしれません……

それから一月後――
ジェイソンがインドから報告を送ってきました。砂ぼこりと洪水に加え、化学肥料、そして殺虫剤に侵された土地にオーガニックのオアシスを造るヴィジェイ・シャーの訪問記です。それでは皆さん、インドへ行ってみましょう。

 
 


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