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2003年6月11日配信:
「ここでは慣行農法による生産では先が見えません。」とボブ・マスは首を横に振りながら言います。「オーガニックしかないんです。」
これは南ニュージャージーで親の代から引き継いだ野菜栽培を営む農業者の言葉であり、完全認定のオーガニック生産を始めてから2年目のことです。そもそも、と彼は説明するのですが、慣行農法による野菜栽培が世界中で増加しており、それにともなって卸売価格は非常に下落し、またほとんど予測することができません。次に、環境基準が厳しくなるのは時間の問題だということです。「ヴァインランドでは、今、レタス栽培がうまくいっているらしいけど、雨が降る毎に新たに大量の化学肥料を投入している。そこの地下水がどうなってしまうのか考えるのも恐ろしいね。もつはずがないよ。」
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急速に市場が悪化
――大量の赤ピーマンの行く末は
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マス農場はニュージャージー州南西部グロスター郡にあります。フィラデルフィアの南、ヴァインランドの北に位置し、ニュージャージー州の広大な沿岸平野に広がる野菜生産の伝統的な拠点です。ボブが1990年に家業を継いでからは、キュウリ、ペポカボチャ、メロン、トマト、ピーマンなど夏野菜の少量生産に力を入れてきました。ここでは、被覆のために芝生を広範に利用した長期輪作が行われています。1990年代の末からオーガニックに切り替え始め、2002年には、認定を受けた最初の1.2ヘクタールの農地で、小規模なCSAを立ち上げました。
今年、彼は総面積32ヘクタールのうち3.6ヘクタールはオーガニック農法を行っています。毎年32ヘクタールの5分の1にあたる土地を野菜栽培用にしていて、その内の半分弱の土地は貸しています。彼は、オーガニック農法に転向するため土地を増やし始めてはいますが、百パーセントオーガニック認定農家として経営していくのか、あるいは、一定のバランスを保ちながらオーガニックと持続可能な農法を続けていくのか、その決定は、地域における市場の発展状況次第でしょう。
ボブは、人生で経験してきたことを、多品種の野菜栽培に生かしています。彼は農場で父親の手伝いをしながら育ち、ラトガーズ大学の野菜園芸学で学士取得、その後大学院で植物ウィルス学の研究に取り組みました。そしてサウスカロライナ州で、郡の農業相談員として3年間勤め、タバコ農家がより市場性のある作物へ転向する手助けしてきました。(「転向を図るのは合法作物に限ってだからね、って彼らに話したんだ」、とボブは冗談で言いました。)父親が農業から身を引こうとしていた時、ボブは家に戻り、5人の兄弟姉妹と話し合った結果、家産は信託に預けてそのまま手をつけないでおこうという意見にまとまりました。現在、ボブの妻レダが農場の経営マネージャ―を務め、マーケティングを促進しています。7歳の息子ダニエルは、夏になると、「畑の害虫探しのナンバーワン」として精を出してくれます。
農場の作業の大半を、ボブは四人の専従季節労働者であるメキシコ移民の人たちに任せています。その中の一人は10年間ボブと共に働いて来ました。彼らには、他と比べても遜色ない時給が支払われています。また、農場敷地内の家が無料で提供され、交通費や農作物も支給されます。ボブは彼らのことを高く評価し、その能力と意見に対し大きな信頼を置いています。「これは仕事です。趣味ではありません。」とボブは強調します。「これで私の家族を支えなくてはならないし、さらに彼らの家族を養えるだけの給料が支払えなくてはならないのですから。」CSAの実行を決断しようとしている時、ボブはまず初めに従業員達にその考えを話しました。「これでやっていけるかな、と聞くと、彼らは大丈夫、やっていけるさと答えてくれたので、みんなやることに決めたんです。」
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オーガニックの畑を周辺からの汚染から守る
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ボブが通常行っている輪作は、多額の投資を必要とせず、土の団粒構造が発達して長期にわたる生産力を生み出していけるよう設計されています。ボブの土地は、大部分がアウラで知られる砂利混じりの砂壌土で、水はけが良く粘土含有量は15パーセントです。有機物を増やすために、ボブは、自治体より提供される多量の葉を利用することから始めます。ニュージャージー州は1980年代末期に、ゴミ廃棄場から日陰樹の葉を持ち出すことを禁止しましたが
、条例は、年間15センチメートルまでの厚さ――1アールあたり5トン相当の乾燥した葉を利用することを農家に認めています。現在ボブは、モンロー郡区
から季節ごとに7,600立方メートルの量の乾燥物を無料でもらっており、地面が凍っている1月に、土を固まらせないようにと、それを敷きます。
地方自治体から提供される葉はゴミがいっぱいで栄養分もないと思っている人は、そのどちらも間違っている、とボブは言います。ラトガーズ協同公開講座が行なった調査によると、1アールに5トンの葉を与えることで、窒素45キログラム、リン4.5キログラム、カリウム17キログラム、カルシウム74キログラム、マグネシウム11キログラム、鉄6.6キログラム、硫黄45キログラム、マンガン2.5キログラム、ホウ素0.17キログラムを土に与えることになり得るのです。「どれもすぐに効力を発揮するわけではありません。」とボブは指摘しますが、次第にそれらは栄養分となっていきます。「2、3年経ってから土を調べれば、栄養分が効力を発揮しているのがわかるでしょう。」
葉の分厚い層が地面を比較的湿った状態に保つので、ボブはふつう6月まで待ってからそれらの葉を土地にすき込み、干草を植え込みます。「干草の根系は、年間2回から3回再生し、それによって有機物が作られます。」とボブは言います。「しかしさらに大事なことは、土を不耕起の状態にすることです。それにより有機物は保護されるのです。」土を耕すと、土の中の有機物の分解が加速します。そういうわけで、「耕起を減らすためにできることなら何でも、土壌の有機物含量を高めることに役立つでしょう。」
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干草畑が土地を肥沃にする
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通常、ボブは干草を売っています。ボブは近くの農家との取り決めで、作物を半分しか作らない代わりに、干草作りを近隣農家の分も一手に引き受けて行うことにしています。しかし畑ではボブはオーガニック農法に転向しつつあったので、そのシステムの中で、干し草をさおでたたいて寝かせておくことに決めました。2、3年経った干草の中へ、秋になるとボブは芝をすき込み、ライムギとヘアリーベッチを被覆作物として植えます。最終的には、翌春に約15〜20センチの高さに成長した被覆作物をボブはすき倒し、畑は再び野菜の栽培に備えます。
この輪作でボブは有機物濃度を、普通の土地では1.5パーセントのところを6パーセントまで引き上げて、彼の土地が肥沃になるための必要条件を全て満たしたのです。「私が習っていた教授の一人が数年前私に次のように言ったのを覚えています。『もし土の中の有機物濃度を高めることができるなら、生産に関する問題の大部分はたちまち解決できる。』と。――教授の言う通りでした。」ボブの南ニュージャージーの砂地の土地には有機物が増え、現在では見るからに黒みを帯びた土になっています。
仮にそのシステムに欠点があるとすれば、それはリンの水準を高くしすぎることなので、ボブはリンの水準を低くする方法に取り組んでいます。「そうしないと――、」と彼は言います。「雑草防除が一番の問題なのに、有機物がこれだけ多いと雑草も喜びます。雑草が列をなして生える頃に私は土を耕しますが、そうやって土を耕して雑草を取り除いた後でも1週間かそこらで、別の雑草の一群がまた生えてくるのです。」ちょうどよい頃に一連の耕作を行なった後、ボブと彼の仲間たちは、厚めの敷き藁を畝の間に敷き、時季遅れの雑草が生えるのを防ぎます。
マス家のCSAへの取り組みは慎重ですが、また斬新でもあります。2002年には彼らは生産物を35のグループに分け、それぞれ10週間にわたって売りに出しました。かなり大きな割り当てを受けとるグループに対しては1週間につき約30ドルの価格をつけました。今年は100人を超える会員の登録があり(他に数人が補欠人名簿にいます)、6月、8月、9月の12週間にわたって分配する予定です。ボブと従業員の仲間たちは、卸売用の農作物に専念するために7月は空けてあります。
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| 畑は単なる野菜の入った箱ではありません |
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ボブはCSAの会員制が発展している現状に満足しています。「今年度の会員の約6割はここから5、6キロメートル以内の所から来てくれています。これは本当に素晴らしいことです。」とボブは驚嘆して言います。
マス家では、週の2日は農場で野菜の集配をし、2日は大フィラデルフィア圏にある野菜の引渡し所へ行きますが、ボブは農場で野菜を会員達に渡した方が良いと思っています。「私たちはずいぶん多くの人たちと関わりました。農場へ来た人たちの95パーセントは会員を続けますが、フィラデルフィアの引渡し所へ来る人たちの7割は会員を辞めていきます。」会報や招待状で農場へのお誘いをするのですが、引渡し所へ来る人たちは「農場とのつながりが持てていない」とボブは言います。「引渡し所へ来る人たちにとって、畑は依然として単なる野菜が入った箱にすぎないのです。」
CSAによりボブは、父と共にずっと以前に諦めてしまっていた卸売市場のための野菜栽培に携わる機会を得ました。また、赤ピーマンのように病気にかかりやすいうえに、NAFTA発足以来、お金になりにくくなっている作物を試験的に栽培するにもCSAは助けになっています。しかし当初、ボブはオーガニック農法で成功するかどうか確信が持てませんでした。慣行農業のやり方に従う隣人の注視を浴び、昨年の春は、自分のしていることがどう見られているのか、神経過敏になっていたとボブは打ち明けます。しかし季節の終わる頃には、少なくとも生産の面では万事が順調に運んでいることに彼は驚きました。「野菜の質の良さにはたまげたものです。慣行農業で栽培された野菜の中で私が知る最も優れたものもこれには及びません。レダは、それを『ボブの小さなエデンの園』と呼んでくれたよ。」
実は、結果的に本当に大変だったことは、CSAの会員が求める以上に野菜を提供した後でさえ野菜が余り、その余剰分の野菜を市場販売することでした。昨年ボブはヴァインランドのブローカーを通して、ロングアイランドの高級品市場の顧客にオーガニックトマトを幾つか売りました。また、他地域のオーガニック商品の卸売り業者と小売業者に彼の野菜のサンプルを渡しました。しかし小売業者の多くがカリフォルニアや外国のオーガニック商品を買い、地元のオーガニック商品には興味がないことを知って、ボブはがっかりしたのです。「人々がスーパーに行って『地元の野菜が欲しい』と言えるところまで学んで欲しいのです。」とボブは言います。さもなければ、「我々の野菜を卸売できる日は、もう限られてしまいます。」
| 「人々がスーパーに行って『地元の野菜が欲しい』と言えるところまで学んで欲しいのです。」とボブは言います。さもなければ、「我々の野菜を卸売できる日は、もう限られてしまいます。」 |
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ニュージャージーの多くの農家と同様、マス家も高地価と奮闘しています。オーガニック専用施設、非オーガニック専用施設、そしてオーガニック用と非オーガニック用ではっきりと区分されている包装場、これらを平行して運営していくのは至難の技です。ボブはできることならすべての運営をオーガニックでやりたいと考えていますが、この計画は借地では実行できないかも知れません。ボブは方々で、もう少し土地を購入して増やそうとしているのですが、近くの31ヘクタールの土地は最近420万ドルで売られており、継続して農業用途に使用することを目的に保護された農地でさえも、地価は手が届かないくらいに急騰しています。
それでもボブは、この市場でいかに生き残るか、またいかに地元の近隣の人たちや社会に評価されるかという答えを見つけ出すのは農家自身だと確信しているようです。「私は自分に問いかけることがよくあります。私たちはどのような農場を次世代に残そうとしているのだろうか、と。」先導するのがボブのような農業者なら答は次のようになるでしょう――地元で販売を行う、持続可能なオーガニック農場だと。
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