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編集者より |
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ここロデール研究所では、この数年、オーガニック栽培者のために雑草管理に注力してきました。特に、不耕起のオーガニックの手法や技術を完成させるべく努力してきました。ですから、私たちは除草剤耐性の遺伝子組み換え技術がいかに破綻しているかを示す証拠を見つけると、たとえそれが経済的な見地からの破綻であっても、これらの結果を発表したいと思うのです。ロデール研究所の研究部長であるポール・へパリーがこの記事へのリンクを電子メールで知らせてくれた時、私たちは「おぉ、2年前の記事だけれども、転載しなくっちゃ!もう一度日の目をみるに値するよ!」と言ったのです。
ここで紹介する話はまさに、アイオワ州立大学の教授が産業界という危険なライオンの巣窟に入っていき、遺伝子組み換えの種子技術の失敗について報告したものなのです。
2001年12月にシカゴで行われたアメリカ種子取引協会の会議で、アイオワ州立大学の農業経済の教授であるマイケル・ダフィーは、新しいバイオテクノロジーとそれを利用して開発した品種の種子の商業化を支持する人たちを前に、正々堂々と講演を行いました。
ダフィー博士は、この自分に対立する聴衆の人たちをとても簡潔なメッセージで楽しませました。そのメッセージとは「バイオテクノロジーというものは、過去から現在に至るまで、断じてアメリカ中西部のコーンや大豆農家の役には立つものではなかった」というものでした。
ここにその全文を掲載しますが、ダフィー博士は講演の中で、ラウンドアップ耐性大豆の収穫量が、実際、非遺伝子組み換え大豆の収穫量といかに同等であるか、データを提示して立証してみせました。アイオワ州の農家に災いをもたらすおそれのある変動コストとは、遺伝子組み換え作物における高価な種子に要する費用でした。アイオワ州の農家は、この新しいテクノロジーを使った遺伝子組み換え大豆を作付けすることで、非遺伝子組み換え大豆を作付けした場合と比べて1エーカー(40アール)あたり8ドル
85セント余計に損失してしまったことを、ダフィー博士は見出したのです。
ダフィー博士は、Btコーンの場合もまさに同じことが言えることを確認しました。つまり、Btコーンを作付けした場合、非Btコーンの場合と同程度の収穫量でありながら、経費が増加した結果、1ブッシェルあたり3ドル25セント余計に損失したのです。
実際に農家を営んでいる人から集められた現実に起こっていることの報告は次のことを決定的に結論づけています。すなわち、アイオワ州のコーンと大豆の農家は、これら新しい技術革新からは何の恩恵も受けていないのです。誰が恩恵を受けているのか、推測するのは簡単でしょう。
ダフィー教授がきわめて明快に述べているように、「特定の企業や部門などに市場を支配する力が集中すれば、市場は破綻し、資源を効率的に分配Iする市場の機能は停止する」のです。実際、そういうことをしてきたことが、現在に至るまで、経済的にも環境的にも大きな破綻をもたらしてきたのです。多分、一歩踏み出して、世界にもっとよい方法を示す時期が来ているのでしょう。
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2003年12月3日配信: おはようございます。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。これから、極めて重要な話題を中心にお話したいと思います。しかしながらこれから私が取り上げる話題を巡っては、現実の問題について真摯に話し合うよりむしろ、話術や威嚇戦術のみに頼る人々が相互に対立して争う事態となる場合の方があまりに多いのです。
我々は誰でも先入観を持っています。そして誰が何を言ったかとは無関係に、この先入観が我々自身のものの見方を左右しています。科学者として私たちは、研究からこの先入観を取り除こうと努力しているのですが、一つの問題に注意を傾けることにより別の問題を見なくなるというその事実こそ正に、私たち自身の先入観を浮き彫りにするものです。ですから、私たちが真剣に努力しなければならないのは、最初から私たち自身の先入観を認め、そしてそれを抑制することなのです。
私は、アイオワ州立大学レオポルド持続可能農業センターの副所長でございます。また、同大学の新規農業者センターの担当教授でもあります。そして最後に、皆さんはご存じないかもしれませんが、同大学公開講座で経済学を教える経済学者であります。
このことは、結局私が、経済的な観点と、農業や農家の人々を研究の対象にするという観点、それら二つの観点からこの世界を考察していることを意味しています。私は教育者であり、できる限り事実に基づくやり方で情報を提示して、人々が自分自身の意見をまとめ上げるための道具や手段を提供するように努力しています。私はまず、経済学とは限られた資源をいかに分配するべきかに関わる学問であり、単なるお金の研究ではないという基本的な前提から出発したいと思います。さらに私は、人間は自然体系の一部を成しており、それから切り離して考えることはできないものだと思っております。ですから、私たちの日常的な行動が自然体系にいかなる影響を及ぼすかは、一連の生態学的な諸原則によって決定されるのですが、これらの原則には、私たちが理解しているものもあれば、十分には理解していないものもあります。
経済学者として私は、市場には、「資源を分配するための有効な機構としての価値」があることを認めています。一方、私は、市場には、「外部(市場の経済活動の当事者以外の個人・企業・部門など)」に向かって有益なものをもたらす効果があることを認めると同時に、外部に有害な影響を与えることがあることも理解しております(企業など市場経済の活動主体が外部に有益・有害な影響をもたらすことを「外部性」といい、有益な場合を「外部経済(external
economy)」、有害なものを「外部不経済(external diseconomy)」と呼びます)。市場が外部に有害な影響を及ぼす「外部不経済」にはいくつかの形態があります(公害はその典型です)。一例として、有益・有害の二面性を持った「外部性」を評価することが難しいことについて説明します。空気や水のような公共財(活動の主体である企業などから見たら空気や水などの公共財は「外部」に相当)は、市場が全ての課題には効率的に対処できない「外部」の領域に相当します(それゆえ公害という「外部不経済」が発生しやすい)。世代間の資源の分配という課題は、市場にとって問題を孕んだもう一つの「外部」の領域に相当します(現在の市場経済に参加できる人に資源を分配できても、未来に生きる人たちに資源の分配はできない。限られた地球の資源を今の世代に分配し尽くしてしまったら、次世代はどうすればいいのか。これも次世代という「外部」に悪影響を及ぼす「外部不経済」の一例です)。最後に一言付け加えさせていただきますが、特定の企業や部門などに市場を支配する力が集中すれば、そのことは資源分配の有効な機構であるはずの市場に有害な影響をもたらすと私は考えています。
今日はまず初めに、バイオテクノロジーについて簡単な検討を加えます。次に、除草剤耐性大豆とBtコーンの農家に対する影響を調査した研究結果を紹介します。最後に、それらのことから幾つかの結論を導き出し、さらに私が確認したことが一体何を示唆しているのかについて考察します。
バイオテクノロジー
20年ほど前から現在に至るまで、バイオテクノロジーという呼び方は、「誤解を招く表現だ。それは、実際には極めて多様な活動の組み合わせと非常に大きな選択の幅を持つものなのに、単一のテクノロジーを示す言葉か、あるいは、個々にいくつかのテクノロジーがあっても全体としては一貫性のある同じようなテクノロジーの総称という印象を与えてしまうからだ」
(Buttel, 1985)と言われ続けてきました。米国農務省(USDA)の出版物においても、「バイオテクノロジーによる処理や製品は、とても多岐に亘っており、互いに共通なことがほとんどないため、それらについての有効な一般論を構築するのは困難である。バイオテクノロジーは、遺伝子工学や遺伝子組み換え技術よりも幅広く、組織や細胞そして胚の培養、プロトプラスト融合(原形質融合)、生物制御あるいは生理的・代謝過程のホルモン制御、遺伝子操作製品の製造、特定の遺伝子を意図した通りに改変することによる植物の品種改良、発酵処理などを含む。」(USDA,
1987)と注記されています。
今回の発表では、そのままバイオテクノロジーという言葉を使っていくつもりです。もちろんそれは、この言葉の使用には本来問題があると認識した上でのことですが、既に解りにくくなってしまっている問題を、大部分の人にとっては専門的に過ぎることを持ち出してさらに混乱させるようなことはしたくないのです。
マイケル・フォックスが、現在に至るまでのバイオテクノロジーにおける重要な出来事を年代順に配列して紹介したものを発表しています。フォックスはその年表を、1869年にメンデルが行った交配実験から始めているのですが(Fox,
1992)、バイオテクノロジーの起源を、特に伝統的な植物の交配に関するものについては、農業が始まり、野生植物の栽培植物化や動物の家畜化が開始された最も初期の頃にまでさかのぼることができると考える人たちもいます。しかしながらキーニーの示すところによれば、「伝統的農業に対して、新しい農業におけるバイオテクノロジーは、分子や細胞レベルで動植物を改造するための手段を提供するものである」(Keeney,
1998)ということになります。
これが伝統的な動植物の交配とバイオテクノロジーの大きな違いです。伝統的な方法では、交配は生物学的に似たもの同士の場合に限られていました。ところが現代の科学者は、そのバイオテクノロジーの力を用いて、従来の交配技術では絶対に不可能だった動植物を作り出すことができるのです。
バイオテクノロジーの恩恵を受けるのは誰なのかと考える前に、ひとつの見解について議論しておく必要があります。その見解については、私は間違っていると思うのですが、バイオテクノロジーを支持する人々の多くが、このテクノロジーは世界の食物供給のために必要であると言っていることです。もしバイオテクノロジーを使わなければ、世界中の人々の多くが飢餓やその他栄養不良に起因する病気に直面するであろう、と彼らは主張するのです。これは確かに懸念すべきことではあります。しかしながら過去の歴史が実証してきたところによれば、食物を供給されているのは飢えた人々ではなく、むしろ豊かな人々、つまり食物を買う財力がある人々の方なのです。緑の革命も初期の頃は、世界の飢餓を無くす手段として推進されました。その結果、確かに食糧生産は増大しましたが、今なお飢餓に苦しむ人々がいるのです。この問題の核心は生産ではなくて、むしろ流通や政治にあるのです。中国人の栄養専門家である何志謙は、「地球は、そこに住む全人類に食糧を供給することができるでしょうか? 厳密に言えば、その問題の本質は政治にある、と思うのです」と述べ、リードはそれを引用しています(Reid,
1998)。バイオテクノロジーについて考える時、世界中の全ての人に食糧供給が行き渡ることと、世界の人口を養うのに十分な量の食糧を生産することは別であり、いずれを望むにせよ、その二つを混同してはいけないのです。
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訳者注
第一世代遺伝子操作および
第二世代遺伝子操作
第一世代遺伝子操作では、農薬散布等の労力の軽減につながる等、生産者へのメリットを考慮したものが開発されてきた。この講演で取り上げられている土壌細菌
Bacillus thuringiensis(Bt)の殺虫性タンパク質の遺伝子を導入した耐虫性コーン、グリホサート剤などの除草剤を散布しても枯死しない除草剤耐性ダイズは第一世代遺伝子操作による農産品に該当する。
一方、第二世代遺伝子操作では、食品としての成分や味等を改変を目指している。食品としての質的な付加価値をつけて、消費者へのメリットを考慮したものである。例えば、血中コレステロールの低下作用等が知られるオレイン酸を多く含んだ高オレイン酸大豆や、アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンの生成を抑えた低アレルゲン米などこれに該当する。
横断的調査
横断的調査とは、ある一時点で調査した結果を,男女別や年齢階級別や収入階級別などに分類して集団の断面を分析することをいい、英語ではcross-sectional
study という。それに対し、一時点で1回限りしか調査を行わないのではなく、一定の時間間隔をおいて繰り返し行う調査を縦断的調査(
longitudinal study)という。このアイオワ州の調査は、2000年の作付け分のみの調査結果なので、横断的調査である。
ブッシェル
米国における1ブッシェルは、
35.24リットルであり、
Winchester bushelともいう。それに対して現在の英国の1ブッシェルは、26.37リットルであり、Imperial
bushelという。なお、ブッシェルは容積の単位であり、その容積の入れ物に何が入るかによって、1ブッシェルが何キログラムに相当するかは、異なってくる。一例を示すと、米国におけるブッシェルの場合、水では1ブッシェルは
35.24キログラムであるが、大豆では約27.2キログラム、コーンでは約25.4キログラムに相当する。この報告は米国アイオワ州における調査報告なので翻訳に際しては、米国のブッシェルの単位を用い、大豆の収穫量のデータについては、1ブッシェル=27.2キログラムを、コーンの収穫量のデータについては1ブッシェル=25.4キログラムを用いて換算を行った。 |
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誰がバイオテクノロジーから恩恵を受けているかという特定の問題について議論する前に、バイオテクノロジーを農業に適用したものの中で何が認可されているか、具体的な事例を調べることが重要です。
1999年5月の時点で、15種の産品に規制のない販売が認可されており、そのうち13種が農産品、2種が非農産品でした(USDA,
2001)。13種の農産品の中に、異なった53の個別品目がありました。それらのうち、3品目だけが「高付加価値形質」と称される特性を含むものであり、残りの50品目には「有用形質」、主として除草剤耐性か虫害抵抗性が含まれていました。
これらは、いわゆる第一世代のバイオテクノロジーあるいは遺伝子操作による農産品です。現在開発中あるいは試験中の第二世代は、利用できる農作物の種類やこのテクノロジーの応用範囲をどんどん拡大していくでしょう。
除草剤耐性大豆
実際の農場でバイオテクノロジーにどんな利点があるのか、除草剤耐性大豆の調査事例を使って吟味してみましょう。これから紹介する調査は2000年の秋に、米国農務省全国農業統計局のアイオワ支局によって行われたものです。対象は2000年の作付け分とし、アイオワ州の大豆生産地を無作為に抽出し、横断的に調査した結果から得たデータを解析しました。
この調査は、収穫量、農薬や肥料の使用量、播種量、実施した機械作業の種類や特性を含み、作物生産をあらゆる角度から網羅的に調べたものです。
除草剤耐性大豆と非耐性大豆の経費及び利益を比較するには、いくつかの価格及び経費を設定する必要がありました。大豆の価格は1ブッシェルあたり5ドル40セントとしました。この価格には、平均的な貸出金利と非常時払いを反映させました。単位面積あたりに必要な殺虫剤の経費はアイオワ州立大学の各種情報源から入手しました。肥料と種子の単位面積あたりの経費は、アイオワ州立大学公開講座の生産コスト概算(Duffy
and Smith, 2001)において使用された値を用いました。最後に、様々な機械作業のコストは、アイオワ州立大学公開講座(Edwards
and Smith, 2001a)から報告されている慣行の経費の平均値をあてました。
最終的なデータセットには172箇所の圃場の調査結果を含めました。これらの圃場のうち、63%(108箇所)が除草剤耐性大豆の使用を報告し、64箇所の圃場が除草剤耐性ではない大豆を栽培しているとの報告がありました。
図1(下図)に除草剤耐性大豆および非耐性大豆の
2000年における平均収穫量を示します。除草剤耐性大豆は1エーカー(40アール)あたり、平均43.4ブッシェル(1,180kg)であったのに対し、非耐性大豆は1エーカーあたり、平均45.0ブッシェル
(1,220kg)でした。この収穫量の比率は、1998年の作付けに対する同様な調査結果(Duffy,
1999)と一致しています。1998年の除草剤耐性大豆の収穫量は、1エーカーあたり49.2ブッシェル(1,340kg)、非耐性大豆の収穫量は51.2ブッシェル(1,390kg)であり、今回の調査結果、1998年の結果ともに、除草剤耐性大豆の収穫量は、非耐性大豆の収穫量の96パーセントとなっているのです。

除草剤耐性大豆あるいは非耐性大豆を栽培することによる主な経費の差は、種子と除草剤の費用にあります。図2(下図)に除草剤耐性大豆と非耐性大豆の種子にかかる費用を示します。種子の費用は、種子の価格に播種量を乗じて算出しました。(播種量は農家から報告された値を使用しました。)非耐性大豆の種子の価格は、アイオワ州立大学公開講座(Duffy
and Smith, 2001)から報告されていた価格としました。この価格に5%の割増金を加えて、除草剤耐性大豆の種子の価格としました。割増金5%というのは、何らかの価格差と必要な技術コストを反映させたものとしては、控えめに見積もったものです。

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訳者注
4ドル35セント〜5ドル69セント
種の費用は、種の値段X 播種密度になっているが、両方とも誤差を伴うデータである。播種密度は農家によって異なり、種の値段はアイオワ州の農業普及所の報告であり、店により異なる。更に、耐性には非耐性の5%の価格割り増しを見込んでいるが、実際は不確かである。よって、$4.35〜
5.69の差と解釈するのが妥当であろう(ロデール研究所による解説)。 |
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除草剤耐性大豆の種子にかかる経費は、非耐性大豆を栽培する圃場に較べて、1エーカー(40アール)あたり平均4ドル35セント〜5ドル69セント余計にかかりました。1998年には、その差は、1エーカーあたり平均7ドル53セントでした。2000年と比べて1998年は、非耐性大豆にかかる費用は比較的安く、それに対して耐性品種にかかる費用はやや高かったからです。て耐性品種の費用はやや高かったからです。
除草剤にかけた経費を図3(下図)に示します。それぞれの除草剤の使用頻度は、農家が報告したものとしました。非耐性大豆は、1エーカーあたり平均26ドル15セントを除草剤に使用しており、除草剤耐性大豆を栽培する圃場よりも、除草剤に6ドル17セント、多くの経費がかかりました。1998年に比べて2000年には概して除草剤の価格が上がっているにもかかわらず、この経費の差は1998年の調査結果と同程度なのです。

除草剤耐性大豆を栽培している圃場では、2000年には平均1.55回の除草剤散布を行ったのに対し、非耐性大豆の圃場では、散布の回数は2.45回でした。除草剤耐性大豆の圃場では除草剤の散布回数は、年1〜4回の範囲内に分布していたのに対し、非耐性大豆の圃場では、最高6回の散布が報告されました。
雑草管理に利用される他の手法としては耕起があります。2000年に除草剤耐性大豆栽培圃場で、少なくとも1回は耕起を行ったと報告したところは48%でした。これと対して、少なくとも1回は耕起を行ったと報告した非耐性大豆の栽培圃場は63%でした。耕起の回数は0〜2回に分布していますが、耕起回数の平均は除草剤耐性大豆の栽培圃場で
0.59回であったのに対し、非耐性大豆の栽培圃場では、平均0.85回でした。
図4(下図)は、除草剤耐性大豆と非耐性大豆の両者における雑草管理に要した全経費を表しています。この図では、耕起の経費に加え、除草剤やそれを散布する経費も含めています。除草剤耐性大豆の栽培圃場における雑草管理の全経費が27ドル14セントであるのに対し、非耐性大豆の栽培圃場では34ドル80セントでした。この場合も、経費およびその差異は1998年の結果と非常に近い値でした。

これまでに言及したものに加え、肥料や石灰、あらゆる機械の運用、保険、そして「土地にかかる経費を考慮したその土地からもたらされる収益の効率(その土地からの収益÷その土地にかかる経費)」を含む全ての経費を考慮すると、除草剤耐性大豆の栽培圃場と非耐性大豆の栽培圃場とでは、経費の差は実質的には存在しないといえます。
ここで使われた「土地にかかる経費を考慮したその土地からもたらされる収益の効率」は、次の3段階で算出しました。
(1) まず、アイオワ州全体における大豆の平均収益を、面積あたり(1エーカーあたり)の土地にかかる経費の平均値で割りました(Edwards
and Smith, 2001b)。
(2) 結果は1ブッシェルあたり2ドル85セントでした。
(3) この値に今回の調査における平均的な収穫量を掛けると、結果は1エーカーあたり
125ドル8セントでした。この値を全ての圃場における「土地にかかる経費を考慮したその土地からもたらされる収益の効率」として使用しました。
(その土地からの収益が同じ場合、その土地にかかる経費が小さければ、算出結果は大きな値となり、収益の効率が良いということになります。一方、その土地にかかる大きな経費がかかると、算出結果は小さくなり、収益の効率は悪いということになります。)
図5(下図)に、除草剤耐性大豆および非耐性大豆の圃場における仕事や管理に対する収益を示します。2000年には、両者とも赤字でした。除草剤耐性大豆の圃場における収益は8ドル87セントの損失であるのに対し、非耐性大豆は1エーカーあたり2セントの損失で、本質的には損得なしでした。

この分析には、検討が必要な重要事項をニ点含めるべきなのですが、今回はこれらを分析に盛り込むことはできませんでした。
(1) 第一に、1ブッシェルあたりの価格が、どちらのタイプの大豆も同じだと仮定した点です。最近では、除草剤耐性大豆であるかどうかによる価格差が考慮されるようになってきています。
(2) この分析から除外された第二の検討が必要な重要事項として、刈り取りに要する時間の差があげられます。農家の報告によれば、除草剤耐性大豆は、コンバインの目詰まりが発生する頻度が低いので、より短時間で刈り取りができるとのことです。目詰まりが発生しなければ、よりきれいな大豆を生産できることもまた、多くの農家が報告しています。
これらの重要事項については、本分析の及ばないところではあります。
これらの検討を要する課題があるにもかかわらず、本分析に基づくと、除草剤耐性大豆の使用は非耐性大豆に比べてその利益において本質的に差はないようです。これは、
1998年に行われた同様の研究において得られた結論と同じです。
除草剤耐性種の使用すれば、除草剤と雑草管理の経費について節減になります。しかしながら、除草剤耐性種では、種の購入経費が高くなり、また収穫量が若干減少してしまうのです。
除草剤耐性種も非耐性種も収益が同程度であるとしたら、なぜ除草剤耐性作物がそんなに簡単に採用されてきたのでしょうか? 数年前、除草剤耐性種が植えられていた農地なんて全くなかったのに、概算によれば半分あるいはそれ以上の農地で植えられるに至ってしまったのです。この現象にはいくつかの理由があげられます。第一に、多くの生産者にとっては、収穫が容易であることが、最優先と見なされるからです。たとえ、その収益において明らかな優位性がなくても、より容易に短時間で収穫できるという理由により、農家は新しい技術を喜んで採用するのです。
特に大変な雑草問題を抱えている圃場で、農家が除草剤耐性種を使っている可能性もあります。平均収益が同程度なら、同じ除草剤耐性種だけを使う方がより簡単です――そうすれば、異種の大豆が混ざり合う問題が生じることはありませんから。
広告と地主からの圧力もまた、除草剤耐性大豆の使用が驚異的に増加したことへの説明の一端となり得るでしょう。なかには圃場がきれいに整っていることにこだわる地主もいて、除草剤耐性種はそういった圃場の選択肢をも提供しています(除草剤耐性大豆圃場に除草剤を全面散布すれば、大豆以外の植物はきれいさっぱりと枯れて、見かけ上圃場はきれいになるわけですから、見かけにこだわる地主なら、除草剤耐性大豆を選択するようにと圧力をかけてくることもあるでしょう)。
すでにお話させていただいた以外にも、除草剤耐性種にはより大きな柔軟性があり、収穫に要する時間の短縮などもその理由としてあげられ、それらの多くが各々に抗しがたい理由となっているのです。しかし、1998年と再度2000年に行われた分析によれば、両種における単位面積あたりの収益性には、差異はまったくないようです。
Btコーン
バイオテクノロジーによって恩恵を被っているのは誰かを判定するための第二の実例として、Btコーン(Bt:
Bacillus thuringiensis: バチルス・チューリンゲンシス)について取り上げます。この調査に使用したデータは、上述の大豆の実例に利用したのと同じデータセットに基づいています。コーンに関しては、128箇所の非Bt種を栽培する圃場と46箇所のBt種を栽培する圃場がありました。
経費と収益は、大豆と同じ方法で算出しました。コーンの価格は1ブッシェルあたり2ドル6セントとしました。この価格には、1ドル76セントの政府定期支払いの貸し出し金利に非常時払いを加えたものを反映しています。
Btコーンの平均収穫量は1エーカー(40アール)あたり152ブッシェル(3,860kg)でした(図6参照)。非Btコーンの平均収穫量は1エーカーあたり149ブッシェル(3,790kg)でした。この収穫量の差は1998年の研究で見出された差よりも小さいものです。

植栽密度は農家から報告されたものであり、他方種子にかかる経費はアイオワ州立大学公開講座から報告されたものですが、同報告によればBtコーンの種の価格は15%の割り増し価格となっています。この割増金には、種子の価格差に技術料を加えたものが反映されています。図7に種子にかかる経費の比較を示します。

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訳者注
集約的管理
狭い面積の土地に、資本・労働力・肥料を大量に投下して土地生産性をあげる農業管理の方法。逆に、面積あたりの生産性を低くして、経費や環境への負荷を軽減する農業管理の方法を粗放的管理という。 |
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Btコーンの圃場では、1エーカーあたりにかかる肥料の全経費がわずかに高く(図8)、Bt種の栽培圃場では肥料にかかる経費が53ドル30セントであるのに対し、非Bt種の栽培圃場では48ドル67セントでした。これらの値は1998年に得られた結果と非常に近い値でした。肥料の経費が高くなる生産上の理由はありませんが、Btコーンの圃場はより集約的に管理され、その結果として肥料の経費が増加したと考えられます。

土地に関するもの以外の全経費は、非Btコーンが1エーカーあたり平均197ドルであったのに対し、Btコーンは1エーカーあたり平均207ドル25セントであった。この差は1998年の経費の差よりも小さくなっています。その当時、Btコーンは、非Bt種に比べて1エーカーあたり20ドル高かったのです。
ここでも大豆の調査結果の分析と同じように、「土地にかかる経費を考慮したその土地からもたらされる収益の効率(その土地からの収益÷その土地にかかる経費)」を算出しました。平均的な賃貸料は1エーカーあたり130ドルとしました。この値はアイオワ州立大学公開講座(EdwardsandSmith,
2001b)から報告されたアイオワ州の平均賃貸料の120ドルよりも高いものでした。
Btコーンも非Btコーンも共に、仕事や管理に対する収益はマイナスでした。Btコーンは1エーカーあたり平均28ドル28セントの損失、非Btコーンは平均25ドル2セントの損失を計上しました(図9)。

除草剤耐性大豆と同様に、Btコーンも収益は基本的に非Btコーンと同程度に過ぎなかったのです。Btコーンは除草剤耐性大豆のようには作付面積が増加してはいないのですが、ここでも、そもそも農家の人たちが同様の技術を採用する理由は何なのかという疑問が生じてきます。とりわけ、Btコーンに関しては、その安全性を巡って市場販売が問題視される可能性があるのに。
現在のところ、農家の多くは、一種の保険としてBtコーンを植えているのです。害虫の集団が発生するかどうかは季節初めにはわからないのですが、害虫の発生しやすい圃場や条件は存在します。そのような圃場では、Btコーンを使用すれば、ここで示された結果とは劇的に違った結果をもたらす可能性があるのです。なお、この調査結果は2000年の作付け分を1回だけ調査しただけの横断的なものであり、複数年にわたって調査した結果を並べて突き合わせての比較研究ではないことに注意が必要です。
農家の中には、Btコーンは茎が折れやすく、また、牛にとっても飼料としては非Btコーンほどおいしそうでないと主張する人もいます。これらの意見があるにもかかわらず、ここで得られたBtコーンの収穫量は非Btコーンよりも多かったのです。この結果は1998年の横断的な調査と同様なものでした。
バイオテクノロジーの恩恵を享受するのは誰か?
先に行われた分析によれば、第一世代のバイオテクノロジーあるいは第一世代遺伝子組み換え作物によって最初に恩恵を受けるのは、おそらくその作物6を作った種子会社であるといえます。さらに、除草剤耐性種の場合には、「耐性の対象となる除草剤を供給する会社」はまた、「そのバイオ作物を作った種子会社」に「その除草剤に対して耐性を有するバイオ作物の開発からの恩恵」を「与える役」を担うことになるのです(せっかく除草剤耐性品種を開発しても、対象となる除草剤が売れなければ、その耐性品種にはとりたててこれというメリットもないのですが、耐性の対象となる除草剤が売れれば、その耐性品種も売れます。除草剤会社の除草剤が売れれば、それに対応した除草剤耐性品種も売れるわけです)。
農家の人たちもバイオテクノロジーによって恩恵を受けてきたように思われます。しかしながら、農家の人たちにとってその利点とは、生産が遥かに容易になること、また1エーカーあたりの利益増加は見込めないのに対して面積をもっと拡大できる可能性がある、といったこととより深い関係があるようです。農家の人たちが恩恵を受けていることは、この新しいテクノロジーが急速に採用されたことが証明しています。既に述べたように、アイオワ州の大豆のうち除草剤耐性種が植えられている耕地面積は、僅か数年でゼロから半分以上を占めるほどになったのです。農家の人たちは、たとえ利益が増加していなくても、紛れもなくその恩恵を認めているのです。
生産量が増加すると価格が下がるので、消費者もまた第一世代のバイオ作物から恩恵を受けていると現在までずっと論じられてきました。しかし、生産量が増加するかどうかは、今日の発表で皆さんにデータをお見せしながら検討しているように、作物の種類よって異なるのです――収穫量は実際のところ、コーンではやや増加していますが、大豆について言えば、わずかに減少しているのです。
今、こうやってデータを皆さんにお見せして検討している作物以外にも、第一世代のバイオ作物はいくつもありますが、目下検討中か否かに関係なく、種々の第一世代のバイオ作物によって消費者が実際に恩恵を受けているかどうかを判断するのは難しいものです。対象となる基礎食料品の価格は、市場では豊富に供給されているため、すでに安くなっているのです。さらに、もしも作物の価格が下がり続けたら、価格を支える政府の計画により、納税者により多く負担が掛かることになるでしょう。
消費者は実際のところ、これらの基礎食料品には食費のほんの一部だけしか費やしていないのです。基礎食料品の価格が変動しても、消費者価格に対する影響はほとんどないでしょう。さらに、バイオテクノロジーに対して消費者が反発していることから、少なくとも一部の消費者には、バイオ作物から作った食料品が基礎食料品に加わることは利点ではなくて危険が加わると見られているのです。
今日のバイオ作物やその応用例は、ただ単に農作業の軽減を目指した第一世代の生産品に過ぎません。これらの実例からは、まず最初に恩恵を受けるのは種子会社と農薬会社であり、次に恩恵を受けるのは農家でしょう――農家が受ける恩恵の度合は種子会社や農薬会社より少ないようですが。食品としての付加価値をつけることを目指した第二世代の産品が提唱されていますが、これに関して将来何が起こるのか(どんな恩恵がもたらされるのか)ということについては、現時点ではまだ不明です。
結論
以上、お見せした結果は2000年の作付けのみを対象とした横断的な調査に基づくものです。任意抽出された地所でペチノブスキーによって繰り返し行われた調査においてもまた同じ結論に到達しました(アイオワ州立大学,
2001)。ここに発表している調査結果と同様に、Btコーンは比較的高い収穫量を得たのに対し、除草剤耐性大豆の方は収量が減少したことが確認されたのです。
今日、バイオテクノロジーから最大の利益を得、それ故バイオテクノロジーの第一の支援者となっているのは種子会社と農薬会社です。農家は、金銭面ではない恩恵をいくらか受けているようです。そして、反対の議論はあるにしても、消費者の利益について現時点で明白に言えることは、ただ雑多で不透明だということだけです。
第一世代のバイオテクノロジーを実際の農場で応用する主な理由は、害虫抵抗性あるいは除草剤耐性など農作業にとって有益とされる入力形質(input
traits)に主眼を置くということでした。この取り組みから考えると、入力形質Dを作物に組み込む会社が最大の受益者になるのは当然のことといえます。出力形質(output
traits: 高栄養価など消費者にもメリットがある形質)にバイオテクノロジー応用の主眼を置くことは、入力形質の場合とは反対に、より広範に分散した領域にわたって利益を生み出すかも知れません。
今回の発表では取り上げませんでしたが、多くの人々にとって懸念となっている問題の一つに、バイオテクノロジーの使用に伴う――特に、現在に至るまで使用し続けてきた場合の――外部性(外部不経済)に関連するものがあります。遺伝子組み換え作物を使い続けることによって、健康に対して未知の影響を及ぼすのではないかという疑問があるのです(言い換えると、遺伝子組み換え作物を食べ続けることによって人の「健康」という、業界から見たら「外部」的要素への悪影響――「外部不経済」――があるのではないかという懸念があるのです)。衛生局は、懸念する必要はないと一般の人々に保証しましたが、多くの人にとって十全な安心感を与えるものとはなっていません。
バイオ作物の使用を巡っては、他にもいくつか外部性の問題があります。これらバイオ作物Eの使用が広範囲に及ぶにつれて、害虫や雑草の抵抗力が急速に発達していくことが推測されているのです(周囲の動植物の性質に影響を及ぼす「外部不経済」)。また、花粉が風に運ばれて全く別の畑に飛来するという問題もあり、バイオ作物種からの隔離を必要とするオーガニック生産物や何か他のタイプの作物を育てようとしている人たちを動揺させています(遺伝子組み換え作物ではない作物の遺伝子を組み換え遺伝子を有する花粉で汚染する「外部不経済」)。
バイオテクノロジーは極めて強力な道具ではあります。それは、多くの予期せぬ問題を孕んでいるだけでなく、多くの有用な生産物を生み出す可能性も秘めています。新しい技術に関しては常にそうであるように、その評価には慎重を期す必要があります。しかし、公共の利益になる製品の開発を、民間の企業に期待するのは賢明なことではありません。企業は営利目的の活動を行うのであり、そこで追求される製品は、その目的達成のために作られているのです。民間企業の研究にそれ以外の結果を期待することは見当違いであり、また現実的でもないのです。
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